限界集落旅の名言

限界集落等の過疎地に住む人生の先輩方から「人生訓」を収集する旅

限界集落の旅 - 徳島県美馬郡つるぎ町編(2)地蔵寺でありがたい話を聴く -

前回からの続き:徳島県美馬郡つるぎ町を訪れた僕は初めての車中泊をした。外気温は4℃。深夜になるにつれてどんどん温度が下がる山中で果たして無事に過ごせたのか。

 

▼前回の記事▼

genkaishuraku.hatenablog.com

 

 

下着にわずかな寝汗を感じて目覚める。

車内に持ち込んだ毛布と簡易の敷き布団で充分春先の夜を過ごせた(朝起きたときに肌がサラサラしていた。アトピー体質の僕は普段なら入浴後に保湿をしなければ肌がカサついたり、汁が出たりする。さらに今回は、皮膚科から処方されている保湿剤を持ってくるのを忘れていた。奇跡の水質だと思った。

岩戸温泉に足を向けて寝られない)

 

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集落の様子

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山の斜面に並ぶ畑と集落

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山の斜面に並ぶ集落


昨晩、聞いた情報を基に地蔵寺に向かう。

お寺が見えてくると、このまま突然、訪問したら迷惑じゃないだろうか?

と不安になってきてしまい、お寺の手前の道を左折。

民家と民家で挟まれた細い道に入った。すると10mくらい先の家の縁側にお婆さんが座っているのが見えた。そのまま通り過ぎた。

「ここから先にいくつもりかい?」

お婆さんに声をかけられた。

「ここより先はもう人が住んでおらんのや」

民家が並んではいるものの、そこに住人はもうこのお婆さんしかいない。

亡くなったり、老人ホームに行ったそうだ。親切に声をかけていただいたことをきっかけに僕とお婆さんは話し始めた。お婆さんは、体にいいから、といってヤクルト400をくれた。

 

お婆さんの格言集

 「この歳になってようやく親のありがたみがわかるようになってきた。」

お婆さんは81歳の元飲食店経営者。自分が年齢を重ねて、親が生きた年数を経ることで、親が自分にかけていた情の深さに気づく。そして親が亡くなってからは、返すことのできない恩の大きさに、親への思いが肥大していく。

「思いは募る。だから親孝行はしときなさい」

あんたいくつや?と聞かれたから30歳ですと応えたら、アカンまだまだ若すぎる、と言われた。まだ30歳はひよっこである。

 

「生きるために動くことは、すべて仕事」

働いて社会貢献する以外にも、食後に薬を飲むことや、近所の人と話すこと、花壇に植えた花を咲かせて豊かな気分になることも全て仕事だという。おそらく息をすることすらも仕事なのだろう。ただ一生懸命生きることが生来、ヒトの仕事なのかもしれない。

「今、そこに花を植えたんやけどもな、鹿がおりてきてみーんな食べてしまうんや」

どの地域も山の食糧不足は深刻で鹿が民家まで降りてくるようだ。5月に花壇の花が咲くらしいがそれまで残っているだろうか。

 

他にも、昔は兄弟が多かった。お婆さんの家にも親兄弟合わせて十数人いた。そのため、まさかこんな年の離れた女の人が自分の兄妹なわけないだろうと思って、自分のお姉さんのことを、何だかよくわからんけど家にいて偉そうに指示を出してくる人、と思っていたらしい。

 

お婆さんに勇気をもらった僕は地蔵寺に向かった。

 

ご住職の格言集 

地蔵寺ではご住職にお話を伺った。

このご住職がなかなかの情報通で「信じるか信じないかはあなた次第」と決めゼリフがつきそうな話をたくさんしてくださった(コアな話をしていただいたもののまだ知りたいことがあるのでいつかまた行ってみよう)

 「この世の基本的に苦しみの世界。多くの人が楽な世界があると勘違いしている」

“楽”とは“苦しみ”を一つ乗り越えた状態のことをいう、とご主人は語る。

人間は一段ずつ成長することに喜びを感じるようにできている(ゲームをクリアするのもそうだな)。『成長』こそが『楽』そのものである。

なので、どこか知らない世界に、自分を受け入れてくれて、二段飛ばしで楽々と、無双しながら生きられる理想郷があると思っていると、(身勝手な)理想と(本来の喜び)現実の差に打ちのめされるだけである。『楽』は確実に身近にある、と思えれば幸せである。

 

「我々は宇宙の欠片だ」

上記の『楽』に話を「仏法遥かにあらず。心中にして即ち近し」という言葉に当てはめて解説してくださった。エライ教えやこの世の真理は宇宙のように何光年も彼方にあるのではなく、実は人の心の中に既にあるというのだ。気づかないだけで、幸せも、喜びもすべて人は持っている。この世の全ては最も身近な自分の中に既にあるのなら、人間の心の広さは宇宙に匹敵する。すなわち我々は宇宙の欠片だと。

信じるか信じないかはあなた次第です」

 

(一旦、コマーシャル)

さらっとした湯が心地よい~♪岩戸温泉~♪

mizuburo.com

(コマーシャル終わり)

 

「(人が苦しむ理由)人間は錯覚の中に生きている」

ご住職に僕の旅の経緯を話し、「人とコミュニケーションをとるのが苦手です」と伝えると「それは錯覚」という話をしていただいた。

「心」は良くも悪くも人に大きな影響を与える。 「30代になってもまともにコミュニケーションができない」という思い込みは「なぜなら自分は根っからの出来損ないだから」と暗示をかける。暗示にかかると、せっかくの周囲の救いの手を振り払い閉じこもってします。そして、思い込みのまま人の心は死んでいくのである。

 

本来、少しずつ経験を積んで成長していくことが『楽』だと知れば、妙な思い込みにとらわれずにじっくり成長できる。たとえ話で、ご住職が20代の頃、お寺に集まる年配の方に何話せばいいのかわからない、という悩みがあったことを聴かせてもらった。

「20代の若造が70代の人に何を言うのって思ってた (笑)無理でしょう」

そりゃそうだわ。

 

「そもそも30代で結果が出ると思っていることが間違い。人生は60代、70代で結果が見えたらいい。30代で人とうまく関われないなんて当たり前」

多分、今の時代にこんなことを言ったら鼻で笑われるか、呆れられるか、良くても『負け組の発想』という落としどころで一定の納得が得られる程度だろう(負け組というのも多分、思い込みということにしよう)。速さが求められるビジネスでは間違いかもしれないけれども、人生では正解かもしれない。

「怒られたりしながら一歩ずつ成長していって、心を覆う思い込みから脱皮するきっかけをつくるのもまた人生」

とご住職は語った。

 

「未知のものはとても怖い。でも「知る」ことで心は強くなる」

恐怖の正体は『未知』。人は知らないものに恐怖する。経験と体験の積み重ねで知識を蓄えれば恐怖や心の弱さは克服可能。ご主人曰く「人は変わりますよ!」。

ただ、生理的に無理なものは無理な気がする…。

 

夫婦の関係「結果は死ぬときでいい」

人間は自分と真逆の人間と惹かれ合うことが多い。

「合わん人間が一緒になるんだから、一筋縄でいくわけない、死ぬときになって相手に、一緒になれたて良かった、と思ってもらえればそれでいい」

 

「お金の話は、無いうちにしておく」

お金や欲は人を変える。

だから財産や相続の話はお金がないうちに話し合って決めておくのがいい。

病気も同じく。もし癌になった場合、お互い相手に知らせるかどうか、病気になってないうちに決めておけば後で悩まずにすむ。

 

人間の深層についてお話を伺い、さすが寺の坊さんは違うわと思ってお礼を言い、地蔵寺を後にした。※上記以外に聴かせてもらった細かな話は後で加筆。

 

ご住職に物知りなガソリンスタンドのご主人を教えていただき、今度はそちらへ向かうことにした。

 

おまけ集落写真集

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ホップ・ステップからのジャンプの飛距離が大きい、価格破壊

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草ヒロ(猫の住処)

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かつて賑わった小道





 

 

次回:物知りなガソリンスタンドのおじさんに会う

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