限界集落の旅-北海道編-『北海道での大阪人の扱い~岩見沢市の集落を散策して休業中の温泉を発見』
2018年の7月19日から北海道へ移り住んで過疎集落を旅していた。
関西人は北海道で3倍くらい面白くなるらしい
旅の無い日は北海道小樽市の飲食店で働いていたT氏(知人)の社宅を寝座にせてもらう代わりにT氏の仕事の手伝いをしていた。僕は大阪出身なので大阪弁でT氏の職場の人(北海道出身)と話していたら、何も面白いことを言ってないのに、やたらと笑いがとれた。接待かと思うくらい笑ってもらって気持ち良くなってしまった。
なんでも北海道の人が関西の言葉を聞くのはテレビ番組くらいだそうで『関西の言葉を話す人≒タレントさん』というイメージらしい。さらに、お笑いの番組もあまり放送されていないせいか、こちらが普通のことを話しても、言葉のイントネーションだけでボケと勘違いされて「なんですか?今のはボケですか?」と確認されたりする。そして口癖のように「うける~」と言われたりして、気持ちいい反面、何か騙しているような気がして切なくなる。
「北海道の人らは、踏み荒らされてへんな」と飲食店のシェフ(大阪出身)が言った。
ある日、シェフが北海道の携帯ショップでスマホを検査してもらったとき、スマホの充電プラグ差込口に汚れが詰まっていることがわかった。「じゃぁ…、汚れを取る何か、武器のような物はありませんか?」とシェフが聞くと、従業員さんにドカンとウケた。
シェフがあっけにとられていると、今度は別の従業員さんが勤務時間を終えて「お疲れ様でしたー」と挨拶して帰ろうとしていた。シェフ曰く「流れで俺もその店員さんに『お疲れ様でしたー』ていうたら…言うやろ?別段、普通のコトやろ。そしたら、店内ドッカーンや。爆笑」だったという。
「ボケとかツッコミに、全く踏み荒らされてへんねやな」とシェフはつぶやいた。
確かに大阪に住んでいたときには毎週土日は漫才番組や吉本新喜劇がテレビで見られていた。関西の人々は日々、知らず知らずのうちにボケとツッコミに洗脳されている。
北海道では関西の3~4倍くらい笑いが起きやすいような気がした。関西でくすぶっている人は北海道に行けば、普段の3~4倍の自信を持てるかもしれない。僕の友人でどんなボケも3~4倍面白くできるツッコミの名手がいるのだが、彼なら北海道で普段の9~12倍は面白くなれるかもしれない(でも、本当にあの時の笑いが接待笑いだったらどうしよう…)。
夏の小樽市は昼間の気温が30℃を越えることもほとんどなく、過ごしやすかった。
夏の北海道と人に居心地の良さを感じつつ、集落巡りを始めた。小樽市から車で1時間と数分程度で行ける空知地方の岩見沢市の集落に向かった。※ただし小樽市は坂道が多く、家から店までの距離もあるから車か原付など“足”が必要。冬は寒さと積雪が凄いから準備と覚悟が必要になる。
岩見沢の集落に到着
温泉を発見
岩見沢市に入り『朝日』『美流渡(みると)』『栗沢』などの地名をまっすぐ進んでいくとやがて『ポンネ湯』という温泉にたどり着いた。源泉からパイプを引いて誰でも温泉を家に持ち帰ることができる仕組みになっており、代金はお賽銭箱の中に入れる無人の持ち帰り温泉である。※かつて、ここですぐ入浴できる温泉施設もやっていたようだがそちらは廃業しているらしい。2018年の7月当時は源泉の貯水槽が壊れてしまい、湯を引くことができなくなっていた(現在は復旧済み)。
名残惜しい気持ちを抑えつつこの近辺を散策した。
旅のゾーン(?)に入る
「こんにちは。何してるの?」
ポンネ湯のあたりをうろうろしていると、集落のお婆ちゃんが話しかけられた。
各地の集落を旅して色んな人の人生経験を伺っているというと、 この辺りの自治会長さんに連絡を取ってもらえることになった。時間を決めて後日、会いに行くことになった。ありがとうございますとお礼を言ってしばらくお婆ちゃんと世間話をした。
このお婆ちゃん実は猫ブリーダーでもあった。過疎化が進み近所で飼いてのいなくなった猫の面倒を見ているという。鼻の下にチョビ髭みたいな黒い毛が生えた『チャップリン』という猫が印象的だった。僕が近づいても逃げもしない猫たちだったから、自分が少し動物に好かれるイイ人になれたような気がした。
お婆ちゃんはこの当時で67歳。まだまだ現役で働いていた。シンドクないのかな?と思ったが、お婆ちゃん曰く「働いたら寂しいこと忘れるからバイトしているの」という。
どうやら旦那さんに先立たれた寂しさを仕事で埋め合わせているらしい。仕事に打ち込み世のため人のため働き、仕事場で同僚と会話を楽しんで……寂しいことを考える暇を自分に与えず元気になる方法として『労働』は合理的で美しいと思った。
ちょっとしんみりしたところでお婆ちゃんからお茶と大量のプラムを貰った。こちらから何のアプローチもしていないのに向こうから話しかけてもらえて食料まで頂けて、さらに地元の人に連絡を取ってもらえるとは。あまりに都合の良い展開に自分が何かしら『旅のゾーン』に入ったような気がした。
この日辺りから僕は自分の眼球の光を気にするようになった。
自分は清らかな心をしているか。悪意はないか。話を聞かせてもらう人生の先輩方を一山なんぼと思ってないか。邪な気持ちが眼球の光に表れているような気がし始めたのである。そのため移動中に車のバックミラーで自分の目を見るようになった。
目から光が消えたら、もう、このゾーン的な何かに入れないんじゃないかと思って「自分は大丈夫か?」と問い続けることになった(2019年現在も引き続き)。
次回:ポンネ湯(地元温泉)復活を目指す自治会長さんにお話を伺いに行く
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