限界集落の旅-街中の限界集落『多摩ニュータウン』の人たちに人生とは何ぞやインタビューした(2)-
前回の続き:東京の街中にある限界集落『多摩ニュータウン』の愛宕地区を徘徊し、道行く人生の先輩方にインタビューを行ってみた。競馬好きのお爺ちゃん85歳やハキハキした92歳のお祖母ちゃん、ガテン系な82歳(推定)のお爺ちゃんに話を聴いた。戦争体験者は苦労が多くやはり堂々としていた。
▼前回の記事▼
愛宕地区をうろうろしながら、今回は戦後生まれの人たちに聴いた人生訓をまとめた。
▼家庭菜園を耕していた夫婦▼
ご主人63歳
-辛いことがあった時はどうやって気持ちを切り替えたらいいですか?-
「会社に行ったら悩み忘れる。仕事しなきゃいけないからな。そんで忘れるくらい大し た悩みじゃなかったんだなと思う」
会社はお金がもらえて悩みを忘れられる逃げ場だという合理的な考え方。ただ、仕事での悩みはどうしようもないかもなと思っていたら、悩んでるなら友達とか女つくるといい、というアドバイスを頂く。さらにご主人はこう続けた。
「悩まないことを心掛けてみな?悩みなくなるよ」
心掛けてからこの境地に到達するまでに、心が折れる可能性がある…。
よくある怖い話で、鏡に映った自分に向かって『お前誰だ』と話しかけてるうち自我が崩壊するという実験を応用して、鏡に映った自分に『俺は悩んでない』と話しかければ暗示をかけられるかもしれない。
-座右の銘はなんですか?-
「川の流れのように。時の流れに身をまかせ。時には娼婦のように。これが私のポリ シー」
日本歌謡曲から引用。人によっては「別にそんなことないですよ」と言われるらしい。当てはまってるかどうかはさておき、自分の生き方をJ-POPのタイトルや歌詞から見繕うと面白い。
-夫婦の関係を円満にするにはどうすればいいですか?-
旦那さん「(妻には)思いやりも何も無い」
奥さん「えぇっ?」
旦那さん「相手のことは考えるけど、思いやりってなると堅苦しいから」
奥さん「(そういうことか)まぁ、あきらめ。なれあいね。」
旦那さんの意見を受けて奥さんにも意見を伺った。
奥さん60歳
-夫婦の関係を円満にするにはどうすればいいですか?-
「二世帯住宅じゃなくていいから、親に頼れる距離で住む」
見張りというか、抑止力というか、身近に相談できる人がいてくれるといいといった考え方。そしてこう締めくくった。
奥さん「60過ぎたら笑ってニコニコして楽しく生きないとね」
旦那さん「今まで楽しくなかったってことか」
奥さん「そういう訳じゃないけど」
人前でこんな軽いやり取りができる関係が良い夫婦なんだろうと勝手に思った。
話を聴いてる途中で一度、アンタの目的は何だ、と問われて変な感じになったが“先人の知識を集めてます”と答えたら、色々と話してくださったからありがたい。
お礼を言ってまた出発した。
再び団地周辺に戻り辺りをうろついた。
70歳の主婦2人に話しかけて『(相手が嫌なら)辛抱する必要ない。離婚してすぐ良いのが見つかるかもしれないし』『嫌だと思って変なのとストレスためてまで一緒に暮らす必要ない』
といった今まで集落巡りとしていて聞いた『夫婦生活には辛抱が必要』という理屈を覆す意見を頂き、さすが都会はクールだわ、と田舎の集落との違いを感じた。
結局、何が正しいかわからんくなったところで、もうそろそろ帰ろうと思い駅に向かった。すると駅に向かう道中、気持ちよく缶ビールを飲んでいる男性を見かけた。この日の最後に話しかけてみることにした。
▼孤独の飲兵衛▼
最近の日本の若い人についてどう思っているか聞いた。
「漫画ばっか読んで、馬鹿が増える。漫画大国なんて馬鹿にされてる」
今の日本人は学ばなさすぎる、鈍感すぎる、と飲兵衛さんは語る。
「なんで勉強した方がいいって?そりゃ自分がそういう思いをしたからだよ」
※ちなみに日本アニメ産業の市場規模:2兆1527億円(アニメ産業レポート2018年より)
-勉強とは?-
「金を稼いで生活するための技術を学ぶことが勉強するってこと。物事を考える勉強が必要」飲兵衛さんは海外の事例を引き合いに出してこう語る。
「ヨーロッパでは家業や技術を身につけ。仕事を継ぐことで、まずは稼ぐ環境を整えている家が多い。日本は意味も無く大学にとりあえず行って無駄にバイトして時間を費やす傾向があるため良くない」
やる気の無い日本人がバイトしても稼ぐ技術は身に付かないし、日本人より安くなおか つやる気満々で働く外国人スタッフに負ける。だから「バイトしたって社会で使える人間は育たない」と飲兵衛さんは語る。「(稼ぐ)能力が無い人間はこれから必要とされない」
-働き方改革について-
「働き方改革なんてとんでもない。女性が子供を育てる時間もなくなって、男性と同じ くストレスや疲労を紫外線のように浴びることになる」
母になり子育てをする女性に教えなければいけないことがあると飲兵衛さん。
例えば、勉強しなさい、出世しなさい、お父さんのようにヒラで稼ぎも少なくて良いの?勉強しないとお父さんみたいになっちゃうわよ!?そういう母親の言葉が父親を愛する子供の心を引き裂くこともあると。勉強はしなければいけないが、そういう接し方は良くないと。愛憎、矛盾、交じり合った言葉に、大人ひいては親とは気が狂いそうになるほどしんどい道だと、どれだけ勉強しても上手くいかないことが人生だと、話だけで辛くなってきた。
酔っているにも関わらず下ネタもなく理論だった受け答えで、逆にこちらへ質問を返してくる。的確に答えられない僕に、人に聞く前にあなたがもっと勉強せねば、と次第に説教オヤジモードになっていくあたりはやはり酔っているからなのか。圧倒される僕。しかし、会話の節目節目に『今の世の中、女性の教育が悪い。家で父親の居場所がないからここにいる』とか『あなたの時間がよかったらマクドナルドでコーヒーでも飲みながら話をしようか』などと、この男性の境遇を匂わせる言葉から哀愁が伝わってきて、説教されても嫌とは思えない妙な感覚になった。
-これからの人生をどう生きますか-
「残りの人生は好きなことして遊ぶ。遊ぶってのは好きな学問をすること」
自分が心から好きなことを好きなだけを誰からも結果を求められずに追求できる環境は楽しいだろうなと思うと、頭から幸福物質がジワーっと出た。そういう人生が送れるようになるまでどれくらい時間がかかるのだろうかと思って吐き気がした。
-そのほか飲兵衛さんの格言-
「日本は会社にいることが仕事」
「日本は“就職”ではなく“就社”」
※他にもありましたがカット。
別れ際になぜか私に「ありがとう」と言った男性。ひょっとしたら愚痴る相手が欲しかったのかも。少しでも何かの発散になったとしたら幸いです。
次回:東京都西多摩郡檜原村のご住職に人生論を聴いたらホッとすることを言われた
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