限界集落旅の名言

限界集落等の過疎地に住む人生の先輩方から「人生訓」を収集する旅

限界集落の旅-北海道編-『岩見沢市の集落~自治会長に話を伺う』

北海道空知地方にある岩見沢市の集落を訪れた。この集落で出会ったお婆ちゃんの手引きで、地元の自治会長さんに人生論を伺うことになった。ありがたい、と感謝しつつ、お話を伺う日時になるまで集落内を散策してみることにした。

 

f:id:genkaishuraku:20190919072451j:plain

カフェを発見したが定休日

イイ感じのカフェを見つけたがこの日は定休日だった。人がいる気配がしなくもなかったが、あまりうっとおしいことはせず、また別の日に行くことにした。

 

ウロウロしていると40がらみの男性がと出くわした。ブログの記事に使えるような写真の撮影ポイントはありませんか、と聞いてみた。「この近くの廃公園に展望台があり、そこから石狩平野が一望できる。天気のいい日には地平線の向こうに落ちていく夕日が泣けるんだ」という。

 

それは見たい。廃公園からの眺めというのが良い。

「紳士淑女の皆様!長蛇の列を並び、数千円支払って眺める、スカイツリーからのコンクリートジャングルの哀愁と、廃公園の目下に広がる石狩平野の悠久に、一体どれほどの差があるのでしょうか?」などと、日常で見失った何かを問いかけたいような気持ちになるはずだ。是非、行こう。

 

「ただし、熊が出るからそこは立ち入り禁止になってるんだ。まぁ、立入禁止の看板を乗り越えて行けば関係ないけどね」

f:id:genkaishuraku:20190919071202j:plain

イベントができそうな広場も熊出没のため立入禁止

 

無料かと思いきや、命が代償になるかもしれない(それならコンクリートジャングルの哀愁の方がコスパが良いかも…)

そして、勝手に立ち入るのはよろしくない。些細なことで炎上する昨今、熊没注意で立ち入り禁止の公園の写真なんかブログにアップできるはずがない。もし仮に、僕がこの時この廃公園に入って石狩平野を一望する景色を写真で撮ってたとしても決して誰にも見せられないので、この景色について、もうこれ以上、何も書けない。

自治会長の家に向かった。

 

自治会長(73歳)

自治会長の家は果樹園だった。

アルバイトのおばちゃんが何人か作業していた。仕事と果樹に向かい雑念を消せる環境なのかもしれない。

 

挨拶をしてお話を伺った。

会長は岩見沢集落名物『ポンネ湯』を再興して地元の活性化を目指している。

▼ポンネ湯▼

genkaishuraku.hatenablog.com

 

ポンネ湯とは、山奥から引いた源泉をポリタンクなどに詰めて持ち帰れる温泉である(かつてはポンネ湯のすぐ側に、その場で湯を温めて温泉気分が堪能できる入浴施設もあったが、今は閉鎖されている)。持ち合わせの容器に湯を移すためのホースのそばには、ノートが置かれており、これまでにポンネ湯を利用した人達の喜びの声が書き込まれた。アトピー改善”など興味深い体験事例が記載されていた。このお湯は有料であるが、リットル当たり価格は決まっていなかった(価格の相場はノート参照※2019年現在は未確認)

この集落を訪れた当時、大水で破壊された源泉を囲うコンクリート壁の復旧活動が続けられていた。

 

 ポンネ湯を守るのは、村の強みを守るためだと自治会長は語る。

「温泉が無くなったら、この地が無くなる」

自治会長の先代とその協力者たちの手によって、源泉から何キロもの距離をパイプで繋ぎ、村の名所は作られた。しかし温泉を維持するために組合が作られたが、組合の維持は至難だった。温泉組合のメンバーがそれぞれの生活事情で次々に脱退する中、先代の意思を引き継いだ自治会長と議員さんも含めた協力者が残り今に至る。

「半分意地。先代が残したものを俺の代で無くしたら申し訳ない」

福井県の集落で出会ったお爺ちゃんは、村人がほとんどいなくなってもその地から離れない理由を『自分のルーツを守るため』と言った。表現は違うけれども似たような感じがした。

『歴史(や思い出)を守る』という行為は『自分が生まれてきた理由を守る』ひいては『自分がこれからも生きる理由』を守るためなのだろうか。最近、歴史や伝統の継承すべきか否か?消えちゃってもいい歴史ってあるんじゃないか?じゃぁ、それを守っている人達は何なのか?といった類のことを考えると、大変、気持ち悪くなります。結論は出ません。

 

話題はこの辺りに出没する熊に移った。

Q.この辺り熊がでるらしいですね。

「お互いガマンしてガマンしてガマンして、、、逃げないでにらめっこする。逃げたら追って来るからにらめっこしてたらいいんだぞ」

さらに何か持ち物があれば、手に取って頭の上に掲げ(ただし攻撃はしない)、俺はヤルときはヤル男だぞ、と言わんばかりに熊の目を見つめるとより効果的らしい。

ただし、どうにもならない熊にもいる。
「民家に餌食いに来てる熊はダメだ。殺される覚悟でかっぱらいに来てるんだからな。人間に出くわしたら殺しにくるぞ」

こちらは対処法はないらしい。

 

自治会長との話をそろそろお開きにする雰囲気になった。

とりあえず僕はその時の持ち金2000円を自治会長に渡した。

自治会長は「?」だった。

「あ…ポンネ湯の復興に使ってください」

なんだか、お金を渡すことで人との距離を縮めようとしている自分が卑しい。

きっとこの時の僕の目は濁った光を放っていたに違いない。

 

次回:喫茶店『人生の途中』で65歳のあんちゃんに出会う

 ______________________________________

限界集落旅のYOUTUBEも公開しています▼

www.youtube.com