限界集落の旅-北海道空知地方岩見沢市-『ラーメン屋 一番』でパチンカーのおかみさんと出会う
北海道岩見沢市の『美流渡(みると)』で猟師さんのお宅を探していた。
害獣駆除をしている猟師さんならではの生き死にの感覚があるんじゃないだろうかと思って、集落の人から聞いたお家の位置を探しながらウロウロしていたのだが、お宅の場所がはっきりとわからない。広大なメロンやブルーベリー畑の中に家や倉庫があるもんだから、例えば「3軒隣の家」と言われても、どこからを1軒の区切りとしていいかがわからないのである。
家探しでお腹が減ったから集落に来た時から気になっていたラーメン屋さんに入った。
▼『一番』という名前のお店である▼
おかみさん(71)が切り盛りしていて、このお店で使われている野菜は家の畑で作ったものが多く使われている。北海道に来たのだからと味噌ラーメンを注文した。
おかみさんがあまりに色艶の良い顔をしているため「美容の秘訣はなんですか」と聞いてみた。すると「ラード塗ってるのよ」とのこと。またまた、謙遜してー。とか言いながら雑談した。おかみさんは夫婦揃ってかなりのパチンコ狂だったらしく、家が一軒建つほどパチンコにつぎ込んだらしい(パチンカーの人は自分のパチンコ愛を「このパチンコ店の柱は俺が建てた」と喩えるのをこのとき知った)。
「そんなに好きだったパチンコなのに、もうやらないんですか?」
『パチンコ台に座って足がむくむようになってからはもうやらなくなった。昔は買い物行くときはウキウキして、パチンコ打たなきゃ損だ!って思ってたけど』
体がパチンコについていけなくなって引退か…。
夫婦でパチンコしていたということは、旦那さんと出玉の交換などをしあってたのだろうか。パチンコの番組で玉の足りなくなった椿鬼奴が旦那さんから出玉を貰うシーンで、「これが夫婦のパチンコだから」とカッコよく語る旦那さん。そんな夫婦パチンカーならではの作法などを今度行ったら聞いてみたい。
ちなみにこの当時、僕が北海道の職場で出会った人の中にはパチンカーが結構いた。
北海道の人はパチンコ好きが多いのかなと思って調べたら、どうもそうらしい。
▼パチンコ店の多い都道府県▼
東京都が891店を筆頭に大阪府(805店)、愛知県(583店)、神奈川県(564店)、北海道では(542店)とある。稼働率でも地域別でトップの九州が33.6%に次いで北海道(33.2%)
※稼働率…店舗の営業時間内で稼働しているパチンコ・パチスロの率。
-メディアシステム社調べ-
僕の地元の大阪府は2位で、近所のパチンコ屋には確かに早朝の開店前から行列ができていたが、友人知人にパチンカーがいないため、あまり実感がない。
■禁煙の仕方
おかみさんは、かつてはかなりのヘビースモーカーで1日3箱は吸っていたらしい。
「なんでそんなに吸ってたのに止められたんですか?」
『普段たばこ飲んでるところにいかないようにしたの。人間もナワバリがあるみたいで、そこにいくと飲んじゃうから』 ※あと孫ができるとより効果的とのこと。
物事に執着があるんだかないんだか、なかなかつかみどころのないおかみさんである。
ただ、この飄々とした雰囲気と会話の距離感が近すぎず、遠すぎず、心地よい。
そんな雑談をしながらラーメンができるのを待った。
店内には漫画や雑誌、カレンダーなんかのラーメン屋らしい日用品が並んでいる。
その中にさりげなく『バイアグラ』のロゴマークが入ったアグレッシブな温度計があるのを見つけてしまい、童貞のように照れくさくなった。美の秘訣は本当にラードだけですか?!と追求したらどうなるだろうという考えが頭をよぎり、申し訳なくなった。
本場北海道の味噌ラーメンがやってきた。白菜などの野菜がたっぷりと盛られており500円台となかなかのコストパフォーマンス(写真と正確な価格忘れ…)。こんなに安く提供してしまって大丈夫ですか、と聞くと、家の畑でとれたのを結構使ってるからタダみたいなもの、とのこと。実際に野菜を作る手間を考えると、材料費タダというのはまやかしに過ぎないが、そういう言葉がスッと出てくる人が作ったからなのか、また食べたくなるお袋の味だった。
ラーメンをすすっていると、ガラガラと店の引き戸が開いて常連客と思しきお爺ちゃんが入ってきた。なんでも、数日前にお店でおつりを何十円か多く貰ったらしく、貰い過ぎてしまった分、返しに来たらしい。
『自分が少なくもらうぶんには良いの。自己責任だから。多くもらっちゃダメだけど』
というおかみさんとしばらく押し問答があって、おかみさんが過払い分を受け取り、お爺さんは家に帰った。
また来ます、と言って僕も店を出た。
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