限界集落旅の名言

限界集落等の過疎地に住む人生の先輩方から「人生訓」を収集する旅

限界集落の旅-北海道岩見沢市美流渡-獣害駆除をする農家の主人と会う

岩見沢市の美流渡集落辺りに獣害駆除をしている農家のお爺さんを訪ねた。

 

 

「畑にビニールハウスがいくつかある家」と近隣の方に教えてもらったものの、広い畑の中に設置されたビニールハウスが、向かって右の家の物か左の家の物かわからず、あぁわからんなぁ…、と思っていた。焦る気持ちを落ち着かせるためブルーベリー畑に入った。

■ブルーベリー畑

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写真の撮り方でブルーベリー畑っぽく見えないですが、ブルーベリー畑です。

 

 

プラスチック製の容器にブルーベリーを狩り放題。

様々な品種のブルーベリーが17列程平行に植えられた畑の中で気に入ったものを味見しながら散策できる。

(正確な値段は忘れたがグラム単位で値段が決まり1盛り500円くらい)

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熟し具合と畑のレイアウト図



立札に書いてある『真っ黒に熟した』実を探したが、ほとんど先客に狩られていた。

時々「これは凄いんじゃないか?!」と思う漆黒の実が見つかり食べてみたが、甘いんだけど少し水っぽい。

畑の管理者曰く、ここ数日の雨でブルーベリーが水っぽくなってしまったとのこと。

もっと早く来ておくべきだった。

社宅に住ませてくれているT氏のお土産用にできるだけ黒い実を収穫して、僕の後に入園した親子連れにも、もっと早く来ておくべきでしたね、でもそれもまた良き思い出だと思い畑を出た。

歩いて、尋ねて、家を見つけた。

 

■メロン農家の主人(78歳)

-獣害への気持ち-

ご主人はメロン農家をしているかたわら害獣駆除も行っている。
害獣駆除は主に鹿や猪や熊などのことで、この辺りでは熊を駆除することがしばしばある。

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人の領域に熊が出る可能性がある

罠にかかって動けなくなった熊を猟銃で仕留めるときに熊は様々な反応を見せる。うなだれる者、暴れる者。どんな熊にもご主人は熊に話しかける。
「お前は自分の生活域を越えて人間の領域に来てしまった。だから撃つぞ?観念したか?命とるぞ?」

ツライ仕事だ。
危険な上に後味は芳しくない。それでも使命感を持って誰かがやらなければならない。娯楽としての狩猟とは全く違う感覚である。そのため害獣駆除を猟友会に頼めば、獣害問題は解決に向かうか?といえばそうではなく両者の間には大きな隔たりがあらしい。

こちとら“こーんなデッカイ熊を撃ってよぉ…”とかいって、武勇伝をノリノリで話してくれるんじゃないかと安易な期待をしていた。ご主人にも熊にも申し訳ない。

 

そんな話をしているときにご主人が飼っている白猫(チビ)が僕の膝に飛び乗り左手の指を舐めてきた。北海道の猫は人に慣れているのか全く警戒心無くこちらに近寄ってくる。「これ、チビ」というご主人に、ぐいっと掴まれてチビは僕の膝から回収された。

 

-仕事をする上で大事な考え方-

「3回失敗してもいいから。何か開ける」

久々に出た『3回失敗すると成功する理論』。大阪の千早赤阪村でも『成功するには3回失敗しないといけない』という意見を聞かせもらった。なんでかわからないが、感覚で3回くらい失敗を経験するのがちょうど成長するタイミングらしい。この辺、理屈ではなく経験知なのでこれを理詰めで教えてくれる人を今後探します。
▼人生は3回失敗しないといけない▼

genkaishuraku.hatenablog.com

余談だがご主人が失敗から学んだことを聞いてみた。
「裏切られたことはある。でも疑ってたら前に進めない」
ご主人曰く本州の人は鋭いため、簡単に人に騙されないが、北海道の人は人を疑わないためよく騙されるらしい。だから猫も人懐っこいのだろうと思った。

 

ご主人の腕を突破してまたチビが僕の膝に飛び乗ってきた。
僕が使っているメモ帳の匂いが気になるのか、チビはやたらとページを嗅いでは舐めてくる。今書いたご主人の格言がにじんでしまった。やめてほしいが、せっかくじゃれついてくれている小猫を無下にはできない。
チビはまだ体が小さく、白い直毛が寝ぐせの様にあっち行ったりこっち行ったりしているから、きっとまだ生まれてそんなに時間もたっておらず物事の分別がついていないのかもしれない。チビはまたご主人に回収された。

 

-良きる上で大事だと思うこと- 
「生きていくことは頑張ること。投げやりになってはいけない。立ち止まって考えてもいいから、後退はしない。足踏みしてもいいから進むんだ」

 

-どうにもならないときってあるんじゃないですか-

「ヒントはある。ヒントを見つける。八方ふさがりなんてのはない。自分の思った以上のことが出てくるから世の中明るいなー」

 

-諦めてしまうことについてどう思いますか-

「自殺する人は甲斐性なし。努力は死ぬためではなく生きるためにするもんだ」

※甲斐性なしというのは『だらしない人』や一生懸命でない人。

今になってこの当時の自分を振り返るとなぜか後ろ向きな方向に話をもっていこうとしているようだ。なにか憑かれていたのかもしれない。そのため『足踏みしてもいいから進むんだ』という言葉が妙に沁みて、何かあるたびに思い返している(2020年現在)


帰りにメロンを2つ持って帰りなさいと勧められた。
「いえいえそんな、話聞かせてもらった上に、そんなん勿体ないです」
『いやいや気にするな。近所にも同じように配ってる』
「じゃぁ、では頂きます」
礼儀として一度断ってから頂いた。
ご主人は2018年限りでメロン農家を引退するとのことで最後のメロンになった。

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最後のメロン

社宅でルームシェアしているT氏と分けて食べた。
良い収穫に舌鼓を打ちつつ『もっと寝かせればもっと甘くなるんじゃないか?』というT氏の提案に乗り、残ったメロンを冷蔵庫で寝かせたところ熟成どころか、うっかり発酵させてしまうのだった。爺さんすまない。

 

次回:AIを操る農家の爺さんに会いに行く

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