限界集落旅の名言

限界集落等の過疎地に住む人生の先輩方から「人生訓」を収集する旅

限界集落の旅-京都府相楽郡和束町編(2)鋼のような心を持つお爺さん現る-

 前回の続き:先人たちの教えを拝聴しに限界集落へ旅立った僕。京都府相楽郡和束町にたどり着いて第一集落人に話しかけたところ第一声を選び間違えて怪訝な顔をされてしまった。

 

 

 

 ▼前回の記事▼

genkaishuraku.hatenablog.com

 

米を作るおじいさん

お婆さんに怪訝な顔をされてしまい落ち込んだ僕はしばらく川を眺めていたものの、そろそろまた集落をうろつくことにした。

 

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しばらく歩くと風に乗ってぬかの香りが漂ってきた。

香りの出所には米農家の倉庫と作業中の男性と女性が見えたので、すみませんと声をかけた。今回は集落を巡っている理由の2割位を話したとため多少の会話にはなった。

心臓が常時高鳴り、脳内が湯だっているような状態では、見ず知らずの人に自分の目的を2割伝えるのが限界であった。

 

男性は農家を営む50代。農家は儲からないとのことで「作っても損するだけや。もう意地で続けている」と語る。

跡継ぎも無く、自分の代で終わりだそうだ。旅を続けている中で日本は農家への助成金制度が不十分でなおかつ地方へのお金の使い方がへたくそだということを知るのだがそれは後日の記事で。

 

この男性は「この集落ではガラス作家の人が住んどるわ。おもろい話聞かせてもらえるんとちゃうかな」と教えてくれた。

「その方はどこに住んでいますか」

「あの家や」

4件程家が並んでいる中からガラス作家さんの家を指をさしてもらったのだが、さすが長年農家を営んでいるだけあって鍛えられた太い指先である、太すぎて4件まとめて指しているように見えた。

「どの家ですか」

「あれや」

4回聞いて4回わからなかった。

人づてに聞くことにしようと思い、だいたい家がある辺りをうろつくことにした。

お礼を言い倉庫を後にした。

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草むしり中のおばさまに出会う

ガラス作家の家とおぼしきところまで歩くと階段が見えた。

せっかくだからと登ってみたところ、突き当たりで山肌に沿った道とぶつかり階段と合わせて丁の字をなしていた。右手に進むと民家と道路の間に生えた草を処理している最中のおばさまと出くわした。

話しかけてみると非常ににこやかに対応していただいた。

こちらはあらかじめ「ニコニコしてても業務的な対応をされる」という話を聞いているから、本来なら「笑っているからとはいえ...」と思うところだが、こちらは緊張状態が続いているものだから、トゲの無い対応をしてもらえるだけでこの人は仏である。

別に本当の意味での人の優しさや暖かさなど無くてもいいと思いかけた(なんか危ない考え方である)。

 

旅の目的を話しつつ子育てなんかについて聞いてみたところ、おば様は「若い頃は街までおりて働いてたから子供はお婆さんにまかせきりだったのよ〜」と自分は子育てにあまり関わっていないそうだ。

結構、こういうスタイルの子育てをしているところは多いみたいで、お婆さんが近所の子ごとまとめて面倒を見ている。

「親はなくとも子は育った(笑)」とのことだ。

ガラス作家さんの家を聞くと案内してくださった。

 

ガラス作家さんに会う

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おばさまにガラス作家さんの家まで案内してもらうと、作家さんは家におられてなおかつ丁度作業の合間だったらしく僕に対応してくれた。

 

「作業中だったら怒ってたかもしれない(笑)」と語るのはガラス作家の児玉みのりさん。ガラスを扱う作業は大変神経を使うため、部外者は決して邪魔してはいけない。

ガラス作品づくりにはガスボンベや釜が必要になるため人に迷惑のかからない広い場所が必要なのである。

ここは家賃も安くボンベを置いても邪魔にならないから「ガラスと向き合う」ためには良い場所である。地の利を活かして、この近辺にはガラスや陶芸関係の作家さんが集まるらしい。

 

児玉みのりさんは2018年の2月に兵庫県篠山市にアトリエを移すとのことで、タイミングが違えば会えなかったのかと思うと、人との縁は一瞬である。気づかずに結ばれなかった縁もたくさんあるんだろう。

 

「9月に篠山市で開催されるアート展に参加するからよかったら遊びに来て」とのお知らせを聞いたところで、先程道案内をしてくださったおば様が児玉さんに自宅で採れた野菜を持ってきた。

今後、この旅の合間にしょっちゅう見かけるお裾分けの光景である。

アート展での再会を約束して児玉さんの家を出た。

 

鋼の様な心を持つお爺さんに会う

児玉みのりさんのお宅を後にすると大柄なお爺さん(81)が腕を組み仁王立ちでこちらを見ていた。

 

「何やら見知らぬ人の話し声がきこえたからなぁ」

地方集落のセキュリティは凄い。

聞きなれない声が聴こえたら即確認である。この集落も良い意味でプライバシーがないのかもしれない。

 

このお爺さんは17歳のときに父親が亡くなり、畑を継いだものの全く作物の作り方がわからず、どうしようかと思っていた翌年に災害に遭い畑が全滅するという憂き目にあったらしい。

「そんなん辛かったでしょう」と聞くと

「別に。若かったしな」

全く気にならなかったらしい。

「周りの人にも助けてもらったしな」とは言うものの畑が潰れるということは生き死にの問題かも思われるのだが…。

 

旅を続ける中で後に気付くことになるのだが「昔の人は超人である傾向が強い」という事実の片鱗に触れた瞬間だった。

もはや教えてもらうとかではなく、そういう精神構造なのだ。

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この日の旅日記


 

村に訪れた者の正体がわかって満足したのか「ジジイはそろそろ晩酌の時間や」といって家に帰っていった。

時計は17時を示していたため帰りのバスの発着時間を考えて僕も帰路に着いた。

 

バスに乗ったら運転手さんが僕のことを覚えていてチョット嬉しかった。

 

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この日の旅日記2

次回:兵庫県篠山市のアート祭りに行く

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集落巡りのYOUTUBEもやってます。