限界集落旅の名言

限界集落等の過疎地に住む人生の先輩方から「人生訓」を収集する旅

限界集落の旅2019-岐阜県の宿『樹庵』オヤジ様の名言と徳山ダム-

前回までのあらすじ:滋賀県の杉野にある集落で『教育』『教養』についての名言を聴いた後、土蔵鉱山で雪化粧をした廃墟を見学。寒さのため足元からキンキンに冷えた。体を恢復させるため車中泊ではなく宿に泊まろうと『樹庵』という小学校を改造した宿舎に向かった。

 

▼前回の記事▼

genkaishuraku.hatenablog.com

 

 

『ラーニングアーバー 樹庵』は小学校を改装した学び舎

ラーニングアーバー横蔵 樹庵

平成15年に3月に廃校になった旧谷汲村立横蔵小学校を改装した宿泊・研修施設。子供の合宿や観光以外にも会社の研修会や懇親会にも使用できる学びの宿。

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夜間の『樹庵』

20時頃、『樹庵』に到着した(旧久瀬村、現在は揖斐川町)。管理人さんに代金を支払い(朝食付き5000円)、明日の朝食の時間を決め、部屋まで案内してもらった。各部屋には『とらいあんぐる』『どんぐり』『ハーモニカ』と名前がついていた。僕は『とらいあんぐる』の間だった。

部屋は広く8畳くらいの広さで、テレビと暖房が設置されている。天井には直径50cmくらいの和紙で覆われた暖色の灯りがついていた。

夏には子供の合宿には嬉しい、広々とした部屋の印象。

管理人さんにウェルカムの緑茶とコーヒーを貰い部屋で飲んだ。

試しにテレビをつけてみたが、あまり見る気になれず着替えてすぐに寝てしまった。

自分もテレビ離れしてしまったものだ。

 

布団はヒンヤリとした重たい感触だったが、すぐに人の体温が移り、エアコンをつけなくても軽く寝汗をかくくらい暖かかった。

 

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部屋(とらいあんぐる)の間

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ウェルカム緑茶とコーヒー


朝になり朝食を食べた後、管理人さん(以下:オヤジ様)と話をした。

オヤジ様(69歳)が話好きな方だったため話し込んだ。

 

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ご飯とみそ汁はおかわり自由(炊飯ジャーと鍋にあるだけに限る)自家製梅干しも美味しい。

 

樹庵にはどんな思いが込められていますか?

『樹庵』は里山につくられた学びの宿である。

人の住む場所を『里』、手つかずの大自然を『山』。

自然と人が共生する中間の場を『里山』と呼び、『樹庵』はこの里山をイメージしてつくられた。子供が自然と遊び、多くの理を学べるように『学びの杜』と思いを込めて、『ラーニングアーバーズ』と名付けられた(元々、オヤジ様が杜『もり』という言葉が好きなのもある)

 

樹庵の風景

 

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朝の『樹庵』

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「日本の文化と言葉を学びたい」とかつてここに長期滞在した外国人客のために、オヤジ様が建てたログハウス

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二宮金次郎

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オバマファンの管理人手づくり

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書庫

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体育館兼書庫

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豊富なラインナップ

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大浴場もある


オヤジ様(管理人)の名言

「今は子供の生活体験が少ないよね。失敗する経験も少ない分、免疫もない。だから大人になったらちょっぴりの失敗でも、こんなに大きく感じてしまう。生命力としては弱いね」

現代っ子の生命力の軟弱さを指摘するオヤジ様。団塊の世代から見ると各世代はこのように見えるという。以下の通り(年数は概要です)

 

団塊の世代(1947~1949年)

『競争の世代、バリバリ仕事する』

高度経済成長期まっただ中、親に余裕がなく、多くの人が自立するしか生活する術がなかった。仕事は生きるための手段。

 

マイルド世代(不明:しらけ世代のことだろうか?)

団塊の反動で競争を嫌がる』

しらけ世代だと...政治に無関心。『無気力・無関心・無責任』を中心とする個人主義が見られた。

 

新人類(1950年代後半~1964年生まれ

『目的が見えない、刹那的な喜びを好む、アメリカ社会的、遊び好き、仕事嫌い』

インベーダーゲームが大ブーム真っただ中の世代。漫画やアニメ、サブカルに傾倒し、元祖サブカル世代と言われる。団塊の世代が開拓した市場を効率よく広げることが求められた。

※芸能人だと秋元康石橋貴明松田聖子etc...

 

団塊jr(1971~1984年生まれ)

ここで話が中断したから不明。

一般的には『長い受験戦争を勝ち抜いて進学、就職に励んだものの、バブルが弾けて掲示が長期的な後退局面に入ったため被害者的な感情を持つ人が多い。リストラを目の当たりにしているため社内で言われたことをしていただけではダメだと感じている』とされている。

 

「教室で学ぶことなんかこれっぽち。大半は人との関わり合いや失敗から学ぶ」

樹庵では自然遊び、人と関わって多くのことを学んでほしい。ここは江戸とか明治でいう寺子屋だよ。とオヤジ様は語る。

「ぶつかり合うこともあるじゃない。
つまずいて転ぶこともあるじゃない。
大人になっても自立できない若者よ。byオヤジ様」

耳が痛いこと。

 

「自立する姿ってのは勉強になるよ。鳥を見ていたら」

集落巡りをしていると人間関係を動物に喩える人がいる。今回は鳥だった。

ヒナのときには親鳥は何往復もして餌をとってくるけれども、育ったらあとはあんたたちで何とかしなさいとばかりに羽ばたくヒナを手助けしない。これは人間も見習うべきだというオヤジ様。

「家族の中でも自立しながら、心が通ってないとね。
自立もしないで、心が通ってるなんてのは甘えの構造だからね。
自立した上での信頼関係。
盆暮れ正月には帰る、祝い事には贈り物をするとかはいいけれども。
甘えは許されないんじゃないですか」

あぁ、耳が痛い。

 

「山は平地より歩きやすいんだ」
話は変わって、オヤジ様は山の歩きやすさを語る。

「国道なんて50年くらいの歴史やろう。昔は文化も物も尾根伝いに伝わったもんだ。
山の上って歩いてみるとわかるけど、思ったより平で尾根が一番歩きやすい。橋とトンネルって技術ができるまでは平地って危なかったから街道っていうのは全部尾根。平地にはありません。今では平地が住みやすいと思ってるから、自分より上の目線を想像できないからね」

徳島県美馬郡つるぎ町を訪れたときに「位の高い人ほど高い所に住んでいた」という話と一致する。山の上をこれからの人類は見直すべきではないだろうか。集落旅をしていると、都会のヒルズの山頂に住むよりも、山の山頂に住む方がステータスが高くなる時代がまたゆっくりと迫ってきている気がする(全く論理的ではないけれども)

 

つるぎ町の記事▼

genkaishuraku.hatenablog.com

 

樹庵には今でも旧東海道を歩いてくる60~70代が宿泊することもある。400km近い距離を一つの目的を持って完歩する人が多いらしい。昔の人たちが歩いた足跡をたどり、昔の旅を体験する。健康的な趣味だ(しんどそうだけど、いや、思ったほどしんどくないのか山だから)

 

「人間歩かないとだめ。
街を歩いてても面白くもなんともない。コンクリートの上は熱くて寒いだけ。
でも歩くにしても義務だと面白くないから結果として動いて健康にいいのが良い。
内臓もよくなる」
それなりに目的をもって、それぞれの生活のスタイルに合わせて『歩く』ことをオヤジ様は推奨する。

 

司馬遼太郎『街道を行く』▼

publications.asahi.com

 

そして山の良さは歩くだけでなく、美味しい農作物作りにも適している。

例えば棚田。斜面に田んぼを作る事で水はけが良くなり、稲にはいつでも新鮮な水がいきわたり美味しい米が実る。ただし、水はけがいい分、いつも水やりをしないといけない。田んぼの水やりは子供の仕事。平地よりもキツイ。

「たのむからオヤジ平地に田んぼ作ってくれ」子供の頃にオヤジ様は自分の父親様に頼んだそうだ。

 

また、この辺りにはかつて平家の落人たちが逃げ延びた場所でもある。

源平山合戦 

この辺りの山には逃げ延びた平家の落人が隠れ住んでいたという。この辺りの人の3分の1は平家の落人らしい。岐阜県福井県の県境にある冠山峠ではかつてこんな戦いがあった。

温見谷に陣を敷いた平家方。対して徳山谷から攻める源氏方。

明朝、冠山に両軍が集い開戦の予定だったが、源氏が巧妙な作戦で隙をつき平家方よりも先に冠山の山頂に到達。平家方が山頂にたどり着いたときには源氏の白旗が一杯になっており平家方は大敗し、平家の落人たちは近くの山懐に逃げ込んだ。『温見谷』は何となく暖かそうな場所だったといういわれがある。

死に追われた人間が温かみを感じた場所だから相当なパワースポットなのではないだろうか。今度、訪ねてみたい。

 

 
ひとしきり話した後、徳山ダムに向かった。

 

▼旧久瀬村の学び舎『ラーニングアーバー横蔵 樹庵』▼

satomono.jp

 

▼オヤジ様の著書▼

bookmeter.com

 

 

冬の『徳山ダム』へ

 徳山ダム(2008年完成)とは

岐阜県揖斐郡揖斐川町一級河川木曽川水系揖斐川最上流部に設計されたダムである。総貯水量6億6,000万㎥は日本最大。ダムの建設にあたり徳山村がほぼ全域水没。

8つの集落うち7つの集落がダムの底に消えた。唯一、ダムに沈まなかった門入(かどにゅう)地区にかろうじて人が住んでいるという情報もあるが、冬の期間中は山から下りているらしい。夏の日であってもダムの水が必要になるほどの水不足には、まずならないため、そもそものダム建設の必要性を疑問視する声もある。

この人工湖はかつての村名から引用して『徳山湖』と名付けられた。

徳山村がダムになるまでの風景を10万枚もの写真に納めた『カメラばあちゃん』こと増山たづ子さんの作品『すべて写真になる日まで』は旧徳山村の様子と村民のあけすけな表情を如実に記録している(綺麗な茅葺屋根の民家が印象的)

今後、徳山村の人たちが移住した地区を訪問して、当時の村の様子などを調べて行こうかと思う。

『すべて写真になる日まで』

pg-web.net

増山たづ子さん▼

www2.nhk.or.jp

徳山ダムの風景

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ダムの映えスポット(女性に人気らしい幾何学模様)

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コンクリの狂気

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徳山ダムの風景

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資料室から撮影(電灯が写っている)

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冬場は行き止まり

徳山ダムには数名の観光客がいた。どの人もちょっとダムを見てすぐに山を下りるか、資料館で少し本やファイルを見る程度。冬場はダムに架かる橋が通行止めになっている上に、これと言って見どころもないようだ(景色はカッコいい)。資料にしたって本気で民俗学や地質学などを学んでいる人、もしくは徳山村について知りたい人か、ダムファンくらいしかありがたがらないだろう。

 

僕と同じ頃にダムに到着した学生と思しきカップルが資料を見ながら、民俗学がうんぬんかんぬん、言ってたが15分くらいでさっさと資料館を出て、駐車場でぬるぬる雪合戦をして帰っていった。コアなダムファンではなかったらしい。でも、研究のためなら軽すぎるし、ダムファンにしても軽すぎるし、20代くらいのカップルがここに何を期待して来たんだろうと思った。ただ、ダムの管理人さんに聞くと若い女の人も写真を撮りに来るらしい。ドライブがてらに『映え』を意識した写真を撮るのなら、まぁありかと思った。

今回はこれで帰ることにした。

 

徳山ダム

www.kankou-gifu.jp

 

草ヒロコレクション

帰り道でに、岐阜県山形県の県境付近で見かけた草ヒロを掲載。

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草ヒロ1

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草ヒロ2

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草ヒロ3

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草ヒロ4

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草ヒロ5

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草ヒロ6

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草ヒロ7

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草ヒロ8

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草ヒロ9

次回は過去にさかのぼって2018年の集落巡り。福井県の越前で出会った守り神みたいな人について書く。

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